2016年2月27日付

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すっかりなじみの言葉となった「想定外」あるいは「想定内」。いつごろからだろうか、と思って調べてみたら、2005年の新語・流行語大賞だった。当時の堀江貴文ライブドア社長がしばしば使った言葉だ▼東日本大震災の東京電力福島第1原発事故では、被災地から避難を余儀なくされた人たちが国や東電に損害賠償を求めている。集団訴訟の数は全国で27もあるそうだ。国や東電は「想定外の事故だった」などとして、争う姿勢を示している▼想定外の出来事に対応していくには、どうすればよいのだろうか。信濃教育会の教育研究所長を務めた教育学者の上田薫さんは、「“想定外と正対しうる”人間の育成を」と指摘している(「信濃教育」1500号)▼上田さんは言う。これまで世にいう学力やしつけは、すべては想定内での問題だった。しかし真に創造的な力は想定外でこそ生まれ、「“正解“など蹴とばして弾力的に、やわらかに強靭に働く」とする。今まで人間が当然のように依存してきたものを徹底的に砕き、想定外に勇敢に挑む強い主体性が必要だと説いた▼こうした人材育成には時間がかかるに違いない。これからは自然災害だけでなく、人口減少や環境問題、国際紛争などに起因し、思いもよらぬ問題が起こりうる。責任回避のために使う言葉ではなく、正面から「想定外」と向き合うことのできる社会や個人が求められている。

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