2021年3月29日付

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取材を終えて車に乗り込んだところで、今しがたお世話になった店の女性スタッフに呼び止められた。忘れ物かと慌てる眼前にお菓子が差し出される。「来店の皆さんへほんの気持ちです」▼店外へ追いかけてまで心を添えるぬくもりが染みた。この自動車販売店の河西進社長に聞けば社員発案のサービスだという。顧客をつかむのは社員の真心。その皆が生き生きと長く働ける職場にしなければ―と思い至ったのが「車を売る気持ちを手放すことだった」と河西社長は言う▼社会は地球環境の改善、新型コロナウイルス感染症との共生、少子化など喫緊課題に直面して変革を求められている。企業はいずこも業態転換や廃業の危機感さえ抱きつつ新たな道、方法の模索に懸命だ。こういう局面ではやはり従来の手法、思考に固執し過ぎない豊富な経験が物を言う▼強い向かい風の春、社会へ一歩を踏み出す若者たちへも大きな期待がかかる。新たな環境はただでさえ気苦労が多い。社会全体が変化の苦しみの渦中とあっては翻弄もされようが、自分にも他者にもこだわり過ぎないしなやかさがきっと強みになる▼一方でいかなる時も決して手放さず、こだわってほしいものがある。もし孤立無援で逃れようもない危機に陥ったと感じたならば迷わず自分を救う道を選ぶこと。昨年来、自殺者が増えている。命との引き換えが必要な仕事、人間関係などない。

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