2021年3月31日付

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陽気のせいで半月ぐらい先の景色を見させてもらっている。見渡せば、あちこちで花が咲き、ヤナギもいつの間にか芽吹いている。春の色がいつもよりきれいに見えるのは、コロナ禍の閉塞感で希望の光を求めているせいかもしれない▼のぞけば春らんまんが堪能できる伊那市観光協会の「高遠バーチャルお花見ゴーグルキット」が売れているそうだ。スマートフォンで映像を読み込み、ゴーグルにセットして再生すると、高遠城址公園の桜が目線に合わせて動く仕組み。「天下第一のお花見」をうたい、外出や遠出をしなくても名所の桜を楽しめるようにしている▼新型コロナの感染拡大で昨年はさくら祭りが中止され、公園は閉鎖措置が取られた。提供している映像はそのときに撮影されたもので、出店もなく観桜客もいない城址で咲き誇る満開の桜を、360度全方位カメラに収めた▼花見の疑似体験ができる面白さ以上に、過去に撮影されたことがないという貴重なシーンが人気を集めているらしい。協会事務局によると、県外の人たちによく売れているという▼東京都内で暮らす子どもにキットを送った人もいた。1都3県に緊急事態宣言が出されていた頃だ。盆も正月も帰省していなかったのだろう。高遠の桜を見て、「帰ってきたいな」と言っていたそうだ。仮想現実とはいえ、親の愛情や古里の思い出が真実となって映り込んでいたに違いない。

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