迫る御柱祭[第2部]つなぐ 3、おんべ職人

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呼吸を整え、専用の台に載せたトウヒの白木の表面にかんなを滑らせる。「スーッ、スーッ」。刃が進むと、向こうが透けて見えそうなほど薄い房が生まれる。手馴れたように見えるが、おんべ作りを始めてまだ4カ月ほど。ここまで完成度を高めるのは容易ではなかった。

工務店を経営する長田並喜(なみき)さん(65)=茅野市豊平下古田=が、諏訪地方でも数少ないおんべの作り手、石井粂男(くめお)さん=諏訪市大手=に弟子入りしたのは昨年10月のこと。ベテラン職人から助言を受けてめきめきと腕を上げ、現在も技を磨く毎日だ。

おんべ作りには数年前から興味があった。「やりたい気持ちはあったが、難しいという話も聞いていたし、なかなか踏み切れなかった」。背中を押してくれたのは、一本の記事だった。御柱祭の伝統を受け継ぐ人々を取り上げた長野日報の特集「つなぐ御柱」。40年にわたっておんべを作り続けてきた石井さんの思いが紹介されていた。

「後を継ぐ衆を育てたい。作り方を覚えたい人には教える。これからも代々、祭りを守ってほしいんだ」。80歳間近となった石井さんの言葉には、伝統を守ってきた自負と責任感が感じられた。石井さん宅を訪ねた段階でも出来るか迷いはあったが、石井さんの「やってみろ」の一言で決断した。

23歳で大工の世界に飛び込み、この道一筋。ただ、工作機械を使うことが一般的となった現在では、かんなを掛けることも少なくなった。刃研ぎから学び直し、その後はトウヒを仕入れてかんな掛けの練習に明け暮れた。石井さんの仕事場にも何度も足を運び、納得いくまで話を聞いたという。

おんべの房の厚さは100分の4ミリほど。かんなの刃を当てる角度や引く力加減が難しく、「マスターするまでに3カ月かかった」。削り出された房が丸まらないよう補助する妻せつ子さん(62)との息もぴったりだ。

支えてくれている石井さん夫妻とせつ子さんに感謝しながら、「1200年とも言われる御柱祭の歴史の一端に関われることが何よりの喜び。木遣(や)り衆の扱いやすいおんべを作りたい」と表情を引き締めた。

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