2021年4月18日付

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彼の地の出来事に思いを寄せ、やがて足元の不安へと引き戻される。歌人石川啄木の詩作「心の姿の研究」の一編「事ありげな春の夕暮」の一節を引く。〈遠い国には戦(いくさ)があり…海には難破船の上の酒宴(さかもり)…〉▼遠い国で起きた戦災・海難を夢想するところから始まるこの詩は、〈何か事ありげな─春の夕暮の町を圧する重く淀んだ空気の不安〉と自身の心を描写した上で、また遠方へと視線を移す。詩人高橋順子さんの解説に助けられながら、啄木の心象風景を思い描いた▼最近、気になった海外のニュースが二つある。世界貿易の大動脈と言われるエジプトのスエズ運河での大型コンテナ船座礁と、アウン・サン・スー・チー国家顧問率いる政権を転覆したミャンマー国軍によるクーデターである。国際社会の問題として注目を集めた▼日用品から工業製品、原材料に至るまで多種多様な品を扱うコンテナ船の運搬は、新型コロナウイルス下での巣ごもり需要を背景に拡大しているという。一方、ミャンマーの軍事クーデターでは日系企業の活動が止まるなどした。いずれも対岸の火事では済まない▼グローバリゼーションと聞いてもピンと来なかったが、コロナが世界にまん延して以降、遠い国の出来事が足元の暮らしにも通じていると思い知らされた。事ありげな春の夕暮れに、「世界は広くもあり、狭くもある」としみじみ思う。

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