2021年5月9日付け

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「あって当たり前」と思い込んでいることは案外多い。健康や変わらぬ日常、家族の存在、伝統ある行事や儀式など。昨年来、それら当たり前がことごとく覆され、かけがえなさや影響の大きさを感じている▼「成人」の節目は大人の自覚と責任感を養い、子ども時代の甘えと決別する人生の大きな転機。社会にとっても担い手の一員として認め、迎え入れる晴れの日だ。この歴史ある儀礼すら中止や延期を余儀なくされた▼「まさか式が行われないなんて考えもしなかった」と話す、慶事衣装業・フェリス(諏訪市)の専務、古屋良美さん。晴れの日に向けて準備してきた本人と家族はもちろん、経済界が受けた打撃も甚大だ。「儀礼の慣習に頼っていた業界の思いも寄らないもろさを知って途方に暮れた」と明かす▼しかしそこからの動きが同社らしい。新成人と家族の残念な気持ちにとことん寄り添った。写真だけでも、と晴れ着に袖を通した新成人を「せっかくだから一日自由に楽しんでおいで」と送り出す。ならば晴れ着で過ごす楽しさ、成人の喜びを味わえる場もあげたいと家族や友と開く成人式プランも作った▼自社業界の苦しさより利用者を思い、共感の先に新しいサービスの形を見いだした同社。心のつながりを頼りに暗闇をゆく。「この際、既成の考えは捨てましょう」と言う古屋さんの言葉は前例のないこの難局に活路の光をくれる。

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