2021年5月16日付

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富士見町井戸尻考古館が収蔵する出土品に「人体絵画土器」がある。1968年に同町烏帽子の唐渡宮遺跡で見つかった縄文中期後葉(約4500~4000年前)の大型深鉢。出産する女性だろうか。胴部分に毛筆風のタッチで絵が描かれる▼「日本最古の絵画資料」ともされる。見たいとの声も多いが、実物は非公開を基本に管理する。蛍光灯に当たると絵が退色する恐れがあるためだ。同じ理由でレプリカ(複製品)も作れなかった▼このほど完成した人体絵画土器の初のレプリカは、資料から直接型取りする手法ではなく、3D技術で作製された。3次元計測で得たデータを基に3Dプリンターで造形し、型取り、彩色の工程をたどる。彩色は職人が担うから、3D技術と伝統技術の融合が正しい言い方かもしれない▼実物にほとんど触れない「非接触」の手法だ。検温・手指消毒器など暮らしの中で非接触の製品が急速に広がるが、考古・歴史資料などの世界では従前より、保護と活用の両立へ非接触の採用が広がった▼コロナ下では非接触と非対面がキーワードだが、人体絵画土器は非接触の技術と精度の向上で、複製品ではあるが「対面」がかなった。この土器が県宝でも重文でもないのは、絵画部分の顔料の年代測定ができていないため。熱を帯びる非接触の技術。表面を傷付けずに「日本最古の絵画資料」を実証できる日が来るかもしれない。

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