2021年5月22日付

LINEで送る
Pocket

湯の香漂う大浴場の片隅で掃除に励むその手際と丹念さについ見とれた。洗面器に椅子、つい立て、排水溝とくまなく洗い上げていく。諏訪湖畔のホテルで浴場掃除を請け負う障がい者就労施設グローブのメンバーの仕事ぶり▼皆、心身にどこか障がいや不調を抱えながら働いている。両角貴裕さんは「自分は手が遅いからその分、仲間に負担がかかると申し訳ない」とチームワークを案じ、動作で後れを取らぬよう自身のハンディと闘う▼「とにかく丁寧に。汚れが残っていては大変」。新型コロナウイルスの感染予防も加わった重い責任を背負って、たわしを持つ手に力がこもる。ホテル一番のウリである温泉施設、しかもその要の衛生を任されて働く誇りも垣間見る▼全国では昨年2月以降の失職者が累積10万人を超えた。手のかかる盛りの子どもを持つ単身親や、病気を抱える人などフルタイムで安定的に働くことが難しい”就労弱者”が路頭に迷っているとも聞く。人口減で働き手が減少の一途にある社会で、個々の状況やハンディを補い合いながら働き続けられる柔らかな就労環境、基盤の整備が望まれる▼不安定な陽気のせいもあるだろうか。この時期、心に不調を来す人が少なくないそうだ。働く意義、生きる意味を見失ってしまう瞬間は誰にでもある。そんな時、ただ「働けることがうれしい」と笑う両角さんの素朴な言葉がぐっとくる。

おすすめ情報

PAGE TOP