2021年6月24日付

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太平洋から躍り出た竜が、列島中央に向けてのたうつように昇っていく。衛星写真に写し出された天竜川を見て一尾の昇り竜を連想した作家の故井出孫六さんは、「諏訪湖は登竜の頭で両眼に神社」と題するエッセーを書いている▼竜の頭が諏訪湖だとすると諏訪大社の上社と下社が眼の位置に収まるという。作家の筆はそこから暴れ竜と化す川の恐ろしさに及ぶ。〈両の眼の位置に神を祀って荒ぶる竜の魂を鎮めようとした〉が、心の隙を突くがごとく竜は巨体をくねらすようにして暴れたと▼井出さんは、伊那谷に大きな被害をもたらした1961(昭和36)年の「三六災害」について回想している。60年前のちょうど今時分、停滞した前線や台風が数日間にわたって大雨を降らせ、その水は無情にも堤防を破壊し、巨大な「山津波」が集落をのみ込んだ▼下伊那郡大鹿村の「大西山の大崩落」と呼ばれる災害では40人余りの貴い命が奪われている。「山が動いて落ちた」と表現した地元住民の証言も、「激甚災害」が続く昨今では現実味をもって受け止めることができる。自然の持つエネルギーはそれだけすさまじい▼過去から学び、教訓を次世代に伝えるための取り組みが進む60年の節目の年である。備えを怠らずと改めて肝に銘じる。とはいえ現状コロナ対応で手いっぱいです。どうか「暴れ梅雨」や「荒梅雨」にはならないでと竜神様に祈っておく。

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