元日展作家の家に中村不折の書と山水画

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長年三村家の2階座敷に掲げられている中村不折の書(右上)と、山水画「不折『山水夏』」

諏訪市諏訪1の三村貴金属店(三村昌暉社長)に、明治、大正、昭和に活躍した洋画家・書家の中村不折(1866~1943年)とされる書と山水画が伝わっている。書は「時雍表昌運」と書かれた額装。山水画は軸装で、箱書きに「不折『山水夏』」とある。三村さんは「祖父や父から不折の名前はよく聞いていた。最近長野日報で不折の作品が紹介されるたびに、書への関心が高まり身近になった思い。家宝として大切にしていきたい」と話している。

不折は江戸に生まれ、現在の伊那市など中南信各地で少年時代を過ごした。正岡子規と出会い、友人の夏目漱石の小説「吾輩は猫である」、島崎藤村の詩集「若菜集」などの挿絵を描き、清酒「真澄」などのロゴとしても用いられている。36年に自ら東京根岸に書道博物館を設立した。

書作品は「時がやわらぎ隆盛な運勢となる」という意味が込められているといわれ、落款と為書きがある。額は縦55センチ、横180センチ。28年に現在の三村貴金属店が建設された当時、2階に結婚式などにも使う座敷を作り、三村さんが物心ついた時からそこに掲げてあったという。「山水夏」は岩や東屋が描かれ、人の姿も見え、淡い色彩が施されている。
 
三村さんの祖父昌三郎さんと父の昌弘さんは、いずれも主に日展を舞台に活躍した金工家だった。出品作は昌三郎さんが鍛金で成形した花瓶に、昌弘さんが彫金を施す親子合作のスタイルで制作。日展入選を重ね、「黄銅銀布目象嵌花瓶『ひるがおの図』」(1948年)は、特選を受賞した。諏訪市美術館は2015年度の企画展として、昌三郎さん、昌弘さんを物語る「金工展―親子合作の美」を開いている。
 
こうした三村家の背景から多くの芸術家との接点があり、不折とも親交があったと考えられる。三村さんは「不折、祖父、父の年齢から推測して、書いていただいたのは祖父の時代と思う」とし、「改めて書と向き合うと書家の思いが伝わってくる。祖父や父の足跡にも思い巡らす機会となった。作品は次代につなげたい」と話している。

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