2021年7月1日付

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「もう打った?」。ちまたではこの頃、こんな言葉が口の端に上る。新型コロナワクチンの接種だ。開始の当初は「予約の電話がつながらない」と憤りや焦り交じりの話だったが、今は接種を受けるかどうかや接種の体験談に注目が集まる▼接種をめぐっては順番を待ちきれず海外へ渡ってまで受ける人がいる一方で、接種を拒む人も少なからずいて選択は割れている。従来のものとは機序が異なり、副作用や長期的な体への影響など分からないことも多い。予測不能な将来の健康影響に対しても覚悟がいるのだからためらいも当然のこと▼ただ、接種が普及しなければ社会の状況を好転できないのも事実。その焦りがそこかしこで高じているのだろうか。接種を終えた人が未接種者からの感染を恐れて会うことを拒んだり、職場で接種を暗に強いたりする差別やハラスメントが報じられている▼「自分は感染しない」との根拠のない楽観も、極度の恐れもあつれきを生む。ただでさえ人のつながりが薄れている状況下だ。身近な人間関係にわだかまりや禍根を残さぬよう、社会も個人もこれまで以上に自制の心が要る▼「家族や周囲のために受ける」という人も、「治験が少なすぎて時期尚早」という人も決断の潔さがまぶしい。問いは二者択一で単純なれど難問で、自分がこの社会でどう生きるのか、どう命を全うしたいのかを問われている気さえする。

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