2021年7月15日付

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支局で原稿に集中している時、屋外の防災無線が住民に避難を呼びかけ始めた。「近くの高台へ」「すぐに」。切れ切れ聞こえる耳慣れない単語に尋常ならざる不安を感じつつ、ともかく外へ飛び出した。15年前の7月のこと▼5日間続いた記録的な大雨で諏訪、上伊那の各地で山が崩れ、川が決壊、氾濫して家々と人をのみ込んだ。被災地では行方不明者の捜索や復旧作業が懸命に続く中、それまでの激しい雨が嘘のようにやんで広がった青空に少し安堵した頃だった▼支局の近くの河川上流で、倒木が流れをせき止めてダム状態になった。決壊すれば鉄砲水が一瞬のうちに中心市街地めがけて駆け下る。そこで避難する住民と行動を共にして取材を続けるか、自身を優先して安全圏へ逃げ切るか―の判断を強いられた。結果、取材を打ち切り、逃げると決めた▼果たしてその選択は正しかったのか。現場の報道を任される身として最後まで職責を全うしなかった悔いを抱きつつ、今なお正解が分からずにいる。同時に、その瀬戸際も最前線に立ち続けた町の職員や消防署員、消防団員の覚悟に心揺さぶられる▼ただ、確かに言えるのは非常事態に過信は命取りということ。雨上がりに「ちょっと様子を見に」外へ出て命を落とした人は少なくない。いざの時に自分はどう動くか、そこにどんな危険が伴うのかを想定してみる。今がまさにその適期だろう。

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