2021年7月21日付

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数々の名作を世に送り出してきた芥川賞作家にして、筆が滞る時はままある。創作することの苦しさを、小川洋子さんがエッセーにつづっている。〈一つ作品に取り掛かると、その間はいかに不安を取り除くかで四苦八苦する〉と▼「不安」と題した一文でエッセイ集「妄想気分」に収録されている。この小説はこの先どう展開するのか、次の場面あるいは一行はどうなるのか。〈もしかしたらこれ以上、一歩も前へ進めなくなるかもしれない〉という不安は執筆している間中付きまとうという▼「不安」の二文字が頭から離れない毎日の中で、小川さんの文章を再読している。コロナ禍という未曽有の危機に、この先どう行動すればいいのか、次にどんな一手を打つべきか皆目見当がつかない。手探りの状態がいつまで続くのか、先の見通せないのがつらい▼4度目の緊急事態宣言が出された東京都など都市部では新型コロナの感染拡大が続き、「第5波」の様相を呈している。感染力のより強い変異株「デルタ株」の増加も心配の種である。政府の対応に振り回されている飲食業や酒類販売事業者の不安はいかばかりか▼不安を取り除くため四苦八苦している状況を早く改善したい。望まれるのはそのための感染対策であり経済対策だろう。トンネルの先に一筋の光明が見えれば踏ん張ることもできる。梅雨も明けた。光風霽月-。心の晴天こそ待ち遠しい。

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