2016年09月16日付

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2016
「赤は女子の色だと思っていた」。作家、重松清さんの小説「赤ヘル1975」はこんな書き出しで始まる。広島カープが初優勝した年、小学生だった筆者も、恥ずかしい気持ちを抑えつつ、赤い野球帽で登校した日のことを思い出す▼「負けて負けて負けて負けて、たまに勝って、また負けて…」。小説は、万年最下位の貧乏な小球団が奇跡の優勝を果たした1975年の広島を舞台に描かれる。原爆の焼け野原から復興を成し遂げた広島の象徴として、市民がカープに寄せる思いがひしと伝わる▼その赤ヘル軍団が25年ぶりとなるリーグ優勝を果たした。図らずも歓喜の瞬間に立ち会うことができた。東京ドームで10日に行われた巨人戦。選手たちの輪の中央で緒方孝市監督が宙に舞う。敵地の左半分を赤く染め上げたファンの歓声が、地鳴りのように響いた▼米大リーグから昨年復帰した黒田博樹投手が、時を同じくして古巣に戻ってきた新井貴浩選手と抱き合って男泣きしている。海を渡った絶対的エース前田健太投手の穴をどう埋めるのか。前評判は高くなかったが、チーム全体が「神ってる」と思えるほど強かった▼小説の中のせりふにある。「『明日こそ』いうんは今日負けたモンにしか言えん台詞じゃけぇ、カープは、セ・リーグのどこのチームよりもたくさん『明日こそ』をファンに言うてもろうとるんよ…」。四半世紀待ったかいがあった。

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