2021年8月10日付

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東京五輪の開幕式で、各競技を表現した絵単語「ピクトグラム」がパントマイムで紹介されて話題になった。単純なデザインで情報を端的に伝える力がある▼赤地に白十字の「ヘルプマーク」もその一つ。義足や体内部の障がい、難病など見た目で分からない困難を抱える人への配慮で10年前に東京都が考案した。電車やバスの優先席表示に使われ、周囲の援助や配慮を必要とする意思表示カードとして全国に広がった▼声を上げずとも周囲に伝えられる利点はあるが、「私は病人、障がい者」と看板を下げるようなものでもある。家族にも偏見が及ぶかと不安になり、他人に気遣いを要求するおこがましさも感じてただ1枚の札の装着に迷い、勇気も要る▼つえが手放せない知人が電車の中、空いた優先席に座ろうと向かう脇をかすめて年配の女性が滑り込んだ。席を陣取りながら「障がい者も平等を訴えるなら立ってればいい」と言ったそうだ。カードを所持することで人の温かさに触れることもあれば、真逆の体験もする▼東京五輪はテーマに「多様性」を掲げた。あらゆる違いを認め合う社会へ前進の歩を刻めているだろうか。この間、歴史的な反感の表出やネットを介した中傷なども散見され、人心の難しさをつくづく感じる。24日にはパラリンピックが始まる。選手の汗と涙のきらめきが、人や社会のわだかまりを少しずつ洗い流すと願いたい。

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