2021年8月22日付

LINEで送る
Pocket

時折照りつけてくる陽光やわずかな湿気が、消えかけた夏の季節感を思い出させる。盆期間が明けて残されたのは暑さではなく、記録的な豪雨の深い爪痕だった。地域のそこかしこで、災害復旧に追われる人たちの姿が見られる▼降り続いた雨は尊い命を奪う土石流を引き起こし、住まいや店舗に床上、床下の浸水を生じさせた。交通インフラにも通行止めや運休の悪影響が及び、快適な通勤、通学の環境は失われたままだ。県内の総被害額は180億円余に上り、なおも増える見込みという▼住宅の浸水被害が深刻な諏訪、上伊那地方では、市町村の社会福祉協議会が災害ボランティアの受け入れを始めた。石や流木が混じった泥の撤去、家財の片付けは重労働。取材先で黙々と奉仕作業に汗を流し、笑顔で被災者を励ます人たちの行動は高潔そのものだった▼辰野町の被災住宅で、家主の男性が「泥の処理だけで何カ月もかかるところだった。本当にありがたい」と声を震わせ感謝していた。片付け後も消毒や災害補償など苦労が待っている。それでもボランティアが差し伸べた手は、彼に人のつながりを実感させ、明日へ進む力をくれたことだろう▼助け合いの社会は、理屈を抜きにした実践によって形づくられるのだと納得した。たとえ自宅が被害に遭わなくとも、同じ地域で苦難に耐える人がいることを忘れずにいたい。災害はまだ、終わっていない。

おすすめ情報

PAGE TOP