2021年9月6日付

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「人さまの世話になって迷惑かけたくないなぁ」。会話の中でお年寄りの口からしばしば漏れる。けがや病気になり、誰かの手を借りなくては立ちゆかなくなる。その心苦しさと不安は高齢者ならず多くの人が抱いているのではないか▼パラ五輪の選手も同じだった。「やりたいことを実現するには必ず誰かの手助けがいる。申し訳なく思う」。「でも…」と話は続いた。介助者と心技とも一体となっての競技は「世話をしてもらう」関係とは程遠く、パートナーとつかんだ勝利は喜びも一層大きかった▼パラ五輪を通じ、「障がい」とは心身の不自由ではなく、社会での生きづらさ(障害)なのではないか、との思いを強くした。世間を見渡せば就労、社会活動への参加、暮らしの身の回りなど基盤の環境にも「できない」を生む障害は数多くある。差別や偏見も根強い▼例え病床から身を起こせずとも、心が折れて立ち上がれなくても、不自由さを抱えて生きる人の姿、発する言葉は地域や社会をより生きやすく変え、医療、福祉の向上、産業界に新たな技術開発をもたらす力を秘めている▼毎日、道ですれ違う人がいる。リハビリだろう。不自由な足で着地の感触を確かめるように歩いている。ご本人は気づいていないかもしれないけれどその歩みは少しずつ早くなっていて、通りすがりの他人にまでも今日を頑張る勇気を与えてくれている。

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