2021年9月23日付

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市町村行政の取材を担当していると、まれに想定外な苦言を呈されることがある。多くは自治体の事業を紙面で紹介するタイミングに関わること。議会に諮る前の事業が掲載される場合は自治体の職員、議員とも神経質になるようだ▼「議決前の議案が決まったかのような印象を与える」。以前、自治体が計画する事業を詳細に報じた際、現職議員からこんな指摘を受けた。記事には関連議案が近く議会に提出される旨の説明を付け加えていたが、報道により「情報が一人歩きしてしまう」とのこと。内容に配慮を求められた▼議員が把握していない事案を掲載するケースでは、事態がさらに複雑化することもある。記者が独自に知り得た情報であっても行政が取材に対応すること自体、面白くないと感じる人がいる。協力いただいた担当部署に抗議が寄せられていると聞き、心苦しい思いになった▼「議会に報告していないのでまだ書かないで」。そんな配慮から取材対応を拒む職員は少なくない。住民に有益な事業であっても、行政が萎縮してしまえば情報を出しづらくなってしまう。結果として何が守られ、誰が得をするというのか▼新聞は行政が発行する広報誌ではない。自治体の発表を待ち、そのまま文字にするような報道に終始すれば、自らの価値をおとしめることになるだろう。何のために情報を発信するのか。自戒の念を込めて熟慮したい。

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