2021年9月30日付

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諏訪や伊那の田んぼで稲刈りが最盛期を迎えている。波打つ黄金色の稲田は「豊穣の秋」と呼ぶにふさわしい。「日本の原風景は」と聞かれて、思い浮かべる人も多いのではないか▼戦後、日本人の食が多様化し、コメの消費量は減少傾向が続く。農水省によると、ピークの1962年には国民1人で年間118.3キロのコメを食べていたが、現在は50キロ台に落ち込んでいる▼岡谷市東銀座の専業農家、増沢俊文さんが著書「農民の生活」に書いていた。「日本の農業は農家(イエ)によって営まれている」と。血縁で結ばれた家族で営むから「跡取り」の存在が重要になる。コメを守るのは家族であろう▼政府は10月1日から輸入小麦の価格を引き上げる。中国の旺盛な需要に加え、干ばつでカナダや米国の収穫量が落ち込み、相場の上昇を招いた。19%の上げ幅は2008年以来の水準という。パンや小麦粉など小売価格への反映は3カ月後の見通しだ。コメの消費回復につながるだろうか▼日本の食料自給率は37%(20年度、熱量ベース)。先進国の中でもかなり低い。増沢さんは「日本農業は有史以来の苦境と危機にある」「農業者を代表する政治家もいない」と嘆く。1927年10月17日の神嘗祭の日に生まれ、農民であることを誇りに激動の時代を生きた増沢さん。人間社会における農業の大切さを訴え、過大な農作物輸入への抗議を貫いた。

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