2021年10月3日付

LINEで送る
Pocket

激しい降りの雲間を縫って散歩をしていた女性が橋のたもとに差し掛かると、か弱い鳴き声が聞こえる。紙袋が落ちていて中には子猫が5匹。「もしまた雨が降り出していたら」と保護を託された田所かよ子さん(諏訪市)は声を震わせる▼7年前、飼い手のない犬猫の殺処分を知って衝撃を受けた。行政にその廃止を求めて動き、とっさに「引き取って里親を見つけます」と手を差し出していたそうだ。昼も夜も数時間ごとにミルクを与え、人懐こく、わんぱく盛りを迎えると飼い手を探す▼地域から野良猫の捕獲を頼られることもある。労は増すが、「子をはらんだ大きなおなかでさまよう母猫を見捨てられない」と駆け付ける。救う命は年間百匹以上、すべてが無償のボランティアだ。田所さん同様に思いある人たちが各地で尽力して不幸な命をつないでいる▼「隣近所に気兼ねせずに一時保護ができるシェルターがあれば」と切実な声も聞こえてくる。行政は「施設を作ればすぐ収容量を超えてしまう」と懸念する。10年以上活動する田中美智子さん(同市)は、保護と処分のいたちごっこが断てない原因を「人間の無責任さ」と嘆く▼行政の殺処分が減ったのは、代わりに山や川に捨てているからだという。えさを与えるなら避妊、去勢とセットでなければ不幸の連鎖は広がるばかり。いつまでも有志の善意に寄りかかっていてよい問題ではない。

おすすめ情報

PAGE TOP