高部の土石流災害 人的被害ゼロ「奇跡的」

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住民から聞き取り調査を行う「防災システム研究所」所長の山村さん(右)

9月5日に茅野市高部で発生した土石流の被災現場を、防災・危機管理のシンクタンク「防災システム研究所」(東京都)所長の山村武彦さん(78)が調査した。流出した土砂や巨大な石の多さ、多くの車両が流された状況から、「相当な雨量だったことが分かる。その中で人的被害がゼロだった高部の例は本当に奇跡的」と語った。

50年以上にわたり、世界中で発生する災害現場を調査してきた山村さんは、今月3日に被災現場に入った。下馬沢川の状況を確認し、住民の聞き取り調査を重ねた。土石流が発生した本流、支流から、さらに川の上方に位置する山中に造成されたメガソーラー発電所にも足を運んだ。

山村さんは集落まで流された大きな石を見つめ「これほどの石が人や建物を直撃すればひとたまりもない」とし、「この規模の災害を食い止めるには、既存の砂防えん堤ではやはり不十分だった」と分析した。一方で周辺の森林は「比較的手が入っている」と評価した。

住民の聞き取り調査では、雨の降り方や周囲の異常を察知した時の状況、避難指示発令情報の把握、避難行動のきっかけなど、災害当日の状況に耳を傾けた。「泥流が住宅を超えて下ってきた」「川の音がものすごかった」「土のにおいがした」「車ごと濁流に流された。一歩間違っていたら死んでいたかもしれない」などの証言が集まった。

発災時は消防や警察が集落内を1軒1軒回って避難を促し、住民も迅速に対応。とっさの行動により、わずかの差で死を免れた事例もあったとし、「本当に奇跡的だった」と山村さん。半月ほど前に発生し犠牲者が出た岡谷市川岸東の土石流災害が住民の危機意識を高めたのではとの見方を示した。

下馬沢川上方にあるメガソーラー発電所については、施設は稜線から伊那市側の斜面に並べられているとし、影響については「何とも言えない。もう少し調査が必要だ」とした。

森林の開発、特に樹木の皆伐や作業道設置のための地表面の掘削、盛り土は地面だけでなく、地下にも大きな影響を与える。山村さんがこれまで調査した被災現場でも「人間が手を加えたことで自然のバランスが崩れ、災害を引き起こした例は枚挙にいとまがない」とも。山を荒らさず、森林を適切に管理する大切さにも触れた。

下馬沢川では今後、県が3基ある既存の砂防ダムの下流側で谷地形の出口付近に新たに砂防えん堤を建設する方針。土石流が発生した支流に治山ダムも整備するなど恒久対策が始まる。

調査を終えた山村さんは「えん堤整備には当然のことながら時間がかかり、樹木が地面の保水力を高めるまで育つにも年月が必要。今回のように被害者を出さないためには災害リスクを意識し、災害に対する『心の堤防』を高く意識し続けることが大事だ」と語った。

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