2021年10月7日付

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藤子不二雄のSF漫画「ミノタウロスの皿」を初めて読んだのは、中学生のころだったろうか。青年を乗せた宇宙船が、地球に似た星に不時着する場面から物語は始まる▼星に降り立った青年が目にしたのは、牛に似た生物が文明を担う世界。食用に飼育される家畜は人間の姿。青年は好意を抱いた少女に逃亡を促すが、少女は「あたしたちの死は、むだなもんじゃないわ。おおぜいの人の舌を楽しませるのよ」とかみ合わない。目線が変わることで、当たり前と思っていた感覚が揺さぶられる体験をした▼伊那市の伊那小学校で4年生が子ブタの飼育を始めたと、本紙の上伊那版が伝えた。ブタは「駒ケ岳山麓豚」となって流通する食用。総合学習の一環として1頭を育て、出荷して精肉を買い取る▼日々の世話を通じ、時に愛らしい姿に触れながらも「おいしくなるように健康に育てる。病気になって捨てられたら悲しいから」「ちゃんと食べてあげて体の一部にしたい」と話す子どもたち。言葉からは賛否の意見をぶつけ合い、悩み抜いた末に子ブタを迎え入れた覚悟が伝わってくる▼子どもたちが自ら決め、学び、結果を受け止める総合学習に力を入れる、伊那小らしい「命の授業」。ブタは来年1月まで育て、肉を食べるか否かはその時に個々で決めるという。大人にとっても重いテーマ。一つではない、それぞれが納得できる答えに近づいてほしい。

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