2016年09月23日付

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芋名月と称される十五夜に供えられる里芋が、伊那部宿(伊那市)にある旧井澤家住宅の縁側に飾られた。カボチャやネギなども並び、真ん中に置かれた二つの三方には、それぞれ里芋の葉が広げられ、「おからこ」が12個ずつ円すい状に積み上げられていた▼伊那部宿を考える会の中村國義会長(74)によると、60年ほど前まで、伊那部宿あたりでは普通に行われていた行事だったそうだ。「中学の頃までは私の家でもやっていて、一晩飾って次の日に食べた。農家ではこの時期の一番のごちそうだった」▼おからこは十五夜のお供え餅。水に浸しておいたもち米を石臼に入れ、きねを使ってすりつぶす。粉状になったらにぎって、鏡餅型の団子に仕上げていく。文化財の活用と食文化の継承のために十五夜行事を復活させたのは2006年。以降、毎年おからこ作りの体験会を行っている同会▼石臼の周りで「このあたりじゃ十五夜の頃はまだ新米がとれなかったし、餅にしてお供えできないからおからこにしたんじゃないか」と誰かが口火を切る。昔話に花が咲く▼翌日、供えた野菜と一緒に煮込み、地域の人たちとともに味わった。もち米の粉をにぎっただけのおからこが、里芋のとろみで餅のような食感に変わる。昔を記憶にとどめている人たちが作り方や飾り方、味やその雰囲気までも伝えていくひととき。文化の伝承とはこういうことなのだろう。

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