2021年10月15日付

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夢で見た保育園時代の記憶は、驚くほどに鮮明だった。ミカンが入っていた赤いネットに固形せっけんが収まり、水道の蛇口にくくりつけられている。保育士が「ばい菌やっつけるよー」と合図すると、園児みんなで手をごしごし。今も欠かさない、手洗い習慣の出発点である▼日本の手洗いの起源は、神社の境内に入る際に汚れを落とした行為にさかのぼる。衛生面の目的意識が加えられたのは戦後、赤痢などの感染予防の効果があると確認されたためだ。庶民生活における歴史は意外と浅い▼19世紀半ば、東欧の医師ゼンメルワイスが手洗いによる感染症対策を訴えた。当初は誰も相手にしなかったが、価値を見直した医療現場から世界中へ普及する。彼が「手洗いの父」と称されたのは100年後。現代までの実証経過を考えれば、功績はことさら輝く▼10月15日はユニセフ(国連児童基金)が提唱する「世界手洗いの日」。「せっけんを使う手洗いは、最もお金がかからず効き目のある”ワクチン”といえる」と習慣づけを励行する。マスク着用、手指消毒と並ぶ新型コロナ対策で毎日手をごしごしするわれわれにとって、大いにうなずける定義だろう▼県の感染警戒レベルが下がる中で、秋の行楽期が最盛となる。県外から多くの人を迎える観光県の住民として、何をすべきか。いま一度、幼少の頃から積み重ねた習慣が命を守ることを思い出したい。

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