2021年10月23日付

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古代ギリシャの大哲学者、ソクラテスは文字が発達したとき、それをひどく批判したという。言語学者金田一秀穂さんによると、会って話すことこそ思考の醍醐味であり、書物ではそれが失われてしまうからダメだ、ということらしい▼ネットが発達した現在では意思疎通の手段は多様化している。金田一さんはエッセーで前段の逸話を紹介しながら、人工的で冷たく空疎だと思われがちなIT時代の通信手段も、〈一部の人々にとっては、極めて人間的な生活を可能にさせる道具〉でもあると言う▼集まることが難しい状況下で人と人をつなぐ手段としてのネットの役割の大きさを実感している人もいるだろう。在宅勤務やオンラインでの会議が当たり前のようになり、画面越しにコミュニケーションをするという場面も増えた。飲み会に婚活にと活用は広がる▼文化庁が「国語に関する世論調査」で、コロナ禍で生じたコミュニケーションの変化を調べている。オンライン会議などでは、話すタイミングや明瞭な発音、映り具合や音量設定といった点に注意している人が多かった。新しい仕組みには新しい対応が必要になる▼最先端の技術に感服しつつ、じかに会って話すことの大切さも感じる。会えない恋人に電話する男のもどかしさを歌ったダニー飯田とパラダイスキングの「電話でキッス」の歌詞をもじれば〈やっぱりねオンラインじゃものたりない〉

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