松澤さん博士号取得 バフ研磨技術デジタル化

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熟練職人としての自身のバフ研磨技術をデジタル化して論文にまとめ、博士号を取得した松澤正明さん

精密金属研磨の松一(諏訪市豊田)の社長で熟練職人の松澤正明さん(58)=豊田=が今秋、兵庫県立大学大学院工学研究科(姫路市)を修了し、博士(工学)の学位を取得した。培った経験と勘に頼る部分が大きい技術をデジタル化して「見える化」し、「見よう見まね」という技術伝承を効率的にしたい-との思いだった。2016年4月から、仕事が繁忙だった1年間の休学を含めて5年半をかけ、業務の傍ら同大学院に通いながら自らのバフ研磨の技を論文にまとめて発表した。

職人歴35年の松澤さん。18年度の「信州の名工」にも選ばれていて、諏訪商工会議所によると、「匠(たくみ)」の称号と博士号を併せ持つ技術者は県内で初、全国でも数人しかいないのではという。

大学院進学は、同商議所が参加を呼び掛け、研究機関が開発した新素材の加工や利用を諏訪地方の中小製造業が共同研究する会を通じ、現在は同大学院の鳥塚史郎教授と出会い、その後、鳥塚教授から話を持ち掛けられた。同大学院では、熟練工の技をデジタル化して技術伝承につなげるとともに、博士号も持つ技術者「スーパー匠」の育成を目指す16年度から3年間の「匠の技プロジェクト」を設立。松澤さんは同大学院に社会人大学院生として進み、プロジェクトに加わった。

松澤さんがまとめた論文は「鏡面研磨技術のデジタル化・見える化と技術伝承への応用」。同大学院が製作し、センサーを取り付けた研磨装置を使い、目に見えない世界を数値化した。

バフ研磨は金属面を鏡のように磨く加工。研究では、高速回転する円板状のバフ(羽布)に材料を押し当てる圧力と時間経過を計測して解析した。熟練者としての松澤さんと3年ほどの経験者、学生らの未経験者が実験し、3者のデータの違いを比較した。1回の実験は5日間で、最初は安定した圧力を一定時間かけ続けることができなかった学生たちは、松澤さんのデータを自分のデータと見比べ、練習することで上達。5日目には松澤さんのデータに近づき、従来は1カ月ほどかかるレベルに達したという。

「デジタル化で、自分の力量が自分で分かったことに驚いた。やって良かった」と松澤さん。他社の技術者育成も支援していきたい考えで、「(技術の)100%はデータを見てできるものではなく、その人の感性がなければ難しい」としながら、希望する企業があればデータの取り方などに協力していきたいとしている。

鳥塚教授は「松澤さんのおかげで職人の技をデジタル化する研究ができた」と感謝。さらに研究を論文にまとめたことが「うれしかった」とたたえている。

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