2021年11月9日付

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海に下ったサケやマスが生まれ育った川に帰ることができるのは、古里の川の匂いを覚えているからだという。母川回帰と呼ばれる習性で、生まれた川に戻って産卵することで遺伝的特性を残し、子孫繁栄につなげるそうだ。「サケマス・イワナのわかる本」(井田齊・奥山文弥著)で知った▼本県でも1980~90年代に千曲川・信濃川水系で「カムバックサーモン」運動が県主導で展開された。小学生が各地で稚魚を放流し、産卵期の晩秋になると、信濃川を遡上したサケの姿がテレビに映し出された▼橋の上から川をのぞき込むようになったのは、この頃からだと思う。新聞やテレビで見た体長60センチのサケは、ハヤやアマゴを追いかけていた少年にとっては規格外の大きさだった。日本海と太平洋の分水嶺に位置する里山で、サケが群れ泳ぐ光景を想像しては激しく興奮していた▼あれから40年。残念ながら一度もサケを見ていない。県の運動もいつの間にか終わっていたようだ。県民は分かっていたと思う。サケの遡上を拒むダムの存在があることを。発電や治水といったダムの機能と両立しないまま、運動だけが進んでいた。「カムバックサーモン」の掛け声は本気ではなかったということだろう▼岩手県盛岡市の中津川では、北上川の河口から約200キロを遡上したサケを見ることができる。「川の匂い」を守る環境整備に取り組んでいるそうだ。

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