2021年11月16日付

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深まる秋を彩る鮮やかなだいだい色。通勤途中の車窓から見える鈴なりの柿の木や、民家の軒先につるされた柿すだれが放つ色彩に毎朝目を奪われる。日本の原風景に触れた気がして、自然と温かい気持ちになる▼日本では古くから冬場の糖分補給源として親しまれてきた柿。縄文、弥生時代の遺跡から種子が出土しているそうだ。鎌倉時代には生食用の甘柿の栽培も始まり、日本人の暮らしと密接に関わってきたという▼「昔はどこの家にも柿の木があった」。以前取材した農家の高齢男性は懐かしそうに振り返りながら「年を取ると実のなる木を維持していくのは大変」とも指摘し、多くが伐採されている現状を悲しんでいた。「原風景が失われる」と感傷的になるのは簡単だが、高齢化の影響は思うより深刻なようだ▼国内ではクマを人里に招き寄せる原因になるとして収穫放棄された柿の木を問題視するケースが増えていると聞く。獣害対策の一環として木の伐採に補助制度を設ける自治体もある。人身被害を防ぐために致し方ない対応かもしれないが「国果」とされる果樹の末路としてはあまりに切ない▼わが家ではこの時期、妻の実家で行う干し柿作りの手伝いを恒例行事としている。骨の折れる作業だが嬉々とした表情で果実をもぎ取り、電動の皮むき機を操作する子どもの姿。この木だけでも残していきたい。そんな使命感を強く感じている。

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