2021年12月2日付

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自然災害や事故の発生時に聞くことの多い「人災」という言葉は、1990年に亡くなった地質学者、小出博氏の造語だという。長野市出身の気象エッセイスト故倉嶋厚さんが著書「お天気歳時記」(チクマ秀版社)で取り上げていた▼小出氏は「本家の災害、分家の災害」なる言葉を残している。土地の来歴を踏まえて災害に強い場所に屋敷を構える本家と、急激な人口増加のもと災害に弱い所に進出せざるを得なかった分家。つまり本家の災害は「天災」だが、分家の災害は「人災」である、と▼昨今、「人災」が指摘される災害も少なくない。大きな被害の出た熱海市の災害でも、土石流の起点となった土地での不適切な盛り土の崩落を要因とする「人災」が疑われている。高度成長期の宅地需要の高まりを受け、盛り土造成された宅地は各地にあるという▼倉嶋さんは、風水害の真の原因は自然の猛威ではなく、対策を怠った人間側にあることを強調した小出氏の言葉を紹介しながら、災害が起こるたびに行政側の責任が厳しく問われることによって、日本の防災対策は著しく進展した、と書く。経験は次に生かされる▼一方で倉嶋さんは、防災における個人の役割にも言及している。〈災害がゲリラ化した現代は、個人の判断、選択、行動が生死を分けることが多い〉とも。過去の教訓を生かし、「荒ぶる自然」との付き合い方を学んでいくしかない。

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