2021年12月9日付

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民家の縁側に丸々とした立派な白菜が幾つも並んで日差しを浴びている。白菜は水分が多いから、収穫後はこうして日に当てて、表面の葉を少し乾かしてから新聞紙に包む。冷所に立てておけば数カ月は保存が利く▼凍てつく冬に向けたこの時期、家々では野菜の保存作業が忙しい。もみ殻の中に伏せる、天日で乾燥させる、塩やみそに漬ける―など方法は野菜ごとにさまざま。近年は冷凍、冷蔵の手軽な力に頼りがちだが、昔ながらの技には利便では代え難い恵みがある▼たとえば干した大根やシイタケは栄養分が生食の数十倍も豊富になるし、うまみも風味も増す。木曽地方で作られる赤カブの葉の「すんき漬け」は、腐敗を抑えるのに塩分ではなく乳酸菌を使う。発酵食品の健康効果は言わずもがな。食物を守る知恵はその地で生き抜くための力でもある▼「干し柿ってね、人生そのものだと思うんです」と富士見町長泉寺の桑澤宥恵住職は言う。「渋は人生でいうなら苦しさ、悲しみ。渋さを味わうほど人の心は強くなる」。日に当たり、寒にさらされながらじっくり時をかけて円熟するのだと諭す▼気持ちばかりが先走り、何かと手間暇が惜しまれる昨今だが、日本人が誇る独自の食も文化も、丁寧な暮らし方に労を惜しまない人たちのおかげで今につながっている。厳しさに負けない、強く豊かな心もそうした生き方の中で育まれるように思う。

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