2016年09月30日付

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〈時雨の雨間なくし降れば三笠山木末あまねく色づきにけり〉。秋の雨はよく詩歌の題材になるが、万葉集にも雨を詠んだ歌がある。昔の人も降ったりやんだりを繰り返す天を見上げながらものを思い、言葉に表現してきたのだろう▼大自然への畏怖の念はいつの時代にもあっただろうが、万葉人は雨に人知を越えた霊力、呪力を感じて、ぬれることを恐れる習俗があったという。日本文学者の古橋信孝さんが、著書に書いている。豊かな実りをもたらす恵みの雨が、ときに牙をむいて襲ってくる▼万葉集に「雨障」という言葉を見つけた。「あまさわり」と読み、手元の辞典によると「雨に妨げられること」とある。〈ひさかたの雨も降らぬか雨障み君に副ひてこの日暮らさも〉。「さわり」とは現代でいう差し障りのことで、雨を疎ましく感じることもある▼連日の雨にもううんざりという人も多いのではないか。台風や前線の影響で、東日本と西日本で9月中旬から記録的な日照不足が続いていると、気象庁が発表した。少ない地域では平年の4分の1ほどしかないという。野菜の価格が上がるなど家計にも響いてくる▼予報によると、すっきりとしない天気が続きそう。台風18号の動きも気になるところである。北海道や東北の大雨被害が記憶に新しいだけに、雨の恵みよりも心配が先立ってしまう。大雨による災害のないことをただただ祈るばかりだ。

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