2021年12月18日付

LINEで送る
Pocket

1カ月ほど前、琵琶湖の水位が低下したことで湖に沈んでいた坂本城の石垣の一部が久しぶりに露出したとの報道があった。明智光秀が湖畔に築いたこの城は安土城に次ぐ壮麗な名城だったと伝わるものの、残っているのはこの石垣だけである▼湖底に眠る遺跡と聞くとロマンチックというか神秘的というか、地上の遺跡とは違った趣がある。以前、安土城考古博物館を訪れて知ったが、実は琵琶湖には100カ所を超える湖底遺跡がある。堆積した微細な泥が美容法のパックのような働きをして特に木製品を守っていたそうだ▼特に興味をそそられるのが琵琶湖北部の葛籠尾崎湖底遺跡で、深いところでは水深70メートル付近に、縄文時代早期から平安時代までの長期にわたる土器などの遺物があまり破損せずに発見されているといい、謎に満ちている▼忘れてはいけない、湖底遺跡と言えば、諏訪湖の曽根遺跡である。縄文初期、9000~1万年前の遺跡で、石鏃(矢尻)や土器などの遺物は数万点に及ぶという。武田信玄の水中墓伝説も信ぴょう性はともかく胸が躍る▼ただ、この人々の営みの跡が水中に沈んだ理由を考えれば楽しい気持ちでばかりもいられない。琵琶湖の遺跡には液状化など地震の痕跡があり、曽根遺跡は気候変動に伴う降水量の増大で水没した説が有力だという。恵みも災厄ももたらす自然との共生というテーマも水底に横たわっている。

おすすめ情報

PAGE TOP