2016年10月02日付

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中高年世代が子どもの頃を語ると、「昔は子どもが入れない大人の世界があった」なんて話になる。「子どもは寝ろ」と追いやられ、大人たちが酒を飲んだり娯楽に興じる姿は、見てはならないもののようにも思えて好奇心をかき立てられた▼近ごろは深夜の居酒屋に幼児連れがいたり、逆に以前は子ども任せだった部活やクラブ活動を保護者が熱心に下支えしている。大人がお膳立てに汗し、子どもは座してもてなしを受けるような光景も随所にあり、かつてのような大人、子どもの領分の境界線は薄れつつあるようだ▼諏訪の御柱祭も境界がないといえるかもしれない。巨木を人力で運ぶ作業は命がけ。道のうねりで太い綱が右へ左へと向きを変え、安全そうに見える曳き子も周囲の人とぶつかったり、綱にはじき飛ばされる危険がある。皆、御柱に意識を集中していて格別に子どもを気遣う余裕などない▼「そこをどけ!」と叫び声が飛び交う中、子どもは自力で安全な足場を見つけなければならない。長い道中、疲れても立ち止まるわけにもゆかない。それでもぐずって泣く子どもを見たことがほとんどない▼鉢巻き姿の紅潮した顔には、大人と肩を並べて役目を果たした誇らしさがのぞく。そんな子どもの心に刻まれる思い出は、自身の体験よりむしろ、「いつか自分も」と憧れの目で見た大人の懸命な姿や、何かに夢中になる背中だったりする。

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