2022年1月17日付

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今年の冬はとりわけ寒い。収まる気配のないコロナの猛威に、原油価格の高騰。気温以上に冷え込みを感じるのは前例なき苦境のせいだろう。そんな折、地域の大人と子どもが手をたずさえて凍り餅を作っていた▼辰野町の東部に位置する沢底地区。里山と清流が織りなす谷あいの自然環境は、夏に涼やかな風を、冬には凍える寒さを連れてくる。住民たちは厳寒を自然の恩恵ととらえ、長く保存食の凍り餅を作り続けている▼紙で包んだ餅を稲わらで連ねて水に浸し、軒下につるして干す。何度か繰り返すと、凍結と乾燥で米のうま味を凝縮させた凍り餅の完成だ。現代のフリーズドライ食品の技術を、先人たちは昔から知恵と工夫で実践してきた▼住民有志団体「さわそこ里山資源を活用する会」は毎年、辰野東小学校5年生を招いて凍り餅の作り方を指南している。児童は米栽培学習の仕上げとして参加し、餅をついて切り、わらで束ねる一連の工程を体験する。丹精込めて育てたもち米を、自ら地域伝統の食べ物にする充実感はひとしおだろう▼食文化は多種多様だが、それを守り伝えていくのは人であると改めて教えられた。「寒さも捨てたもんじゃないでしょ。古里に愛着を持ってほしいんだよ」。凍り餅を作る児童たちを見つめる会員の表情は、誇りに満ちていた。あるべき文化伝承の形を見た気がした。寒い冬、しかし心はぬくぬくと温まった。

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