2022年1月20日付

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子を持つ親としては気になる事件だった。東大前で受験生らを切りつけた少年。「成績が上がらず、人を殺して死のうと思った」と供述したという。どのような理由であれ、決して許されない犯行である▼報道によれば少年は有数の進学校に通い、東大医学部を目指していたという。他県からわざわざ訪れ、自ら目標としていた場所で事件を起こした。強い憎しみと執着を感じる。勉学の象徴ともいえる東大を狙ったことも少年の心の内を暗示しているように見える▼絶望感から自殺願望や復讐願望を抱き、誰かを道連れに無理心中を図ることを精神医学では「拡大自殺」と呼ぶそうだ(片田珠美著「拡大自殺」角川選書)。少年は事件前にスマホを捨てたという報道もある。退路を断って目的を果たそうとする強い決意の表れか。どこかで思いとどまることはできなかったのか▼「勉強だけがすべてではない」。そう言いたいが、心のどこかではきれいごとではないかとも思ってしまう。「いい学校、いい会社、いい人生」-そんな固定観念に縛られているためだ▼今回の事件を含め、無差別に他人を傷つける事件が相次ぐ。自暴自棄になって大きな事件を起こし、人生を終わらせようとする身勝手な犯行である。人生には失敗や挫折もある。思い描いた道から外れても再び挑戦できる、そんな社会の実現が必要だ。そのとき初めて「勉強だけが-」と言える。

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