2022年2月11日付け

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「それは、あなたの個性。良いところなんだよ」。小学5年生の時に、母親が掛けてくれた言葉だ。容姿について思い悩む思春期の少年を優しく包み、前へ進みなさいと背中を押した、救いの一言。生涯の支えとして心に刻んでいる▼生来のくせ毛で、頭髪が伸びると先端がくるりと巻く。天然パーマというやつである。本人は意識せずとも同年の女子集団の好奇心を誘い、「羊」の別称で呼ばれる羽目になった。周りと線引きをされたようで落胆し、視界が暗くなった▼母親はわが子の異変をすぐに察知する。小さく丸まった背中に何かあったかと尋ね、いきさつを聞くや「他の人と違っていいじゃない」と一笑した。「みんなお金を払ってパーマをかけるのよ。うらやましいな」。同情ではなく、個性を認めてもらう喜びで、固まった心の結び目がほどけていくのを感じた▼翌日、勇気を振り絞って彼女たちに言った。俺はこの髪を気に入っている―。それから別称は使われず、ちゃんと名前で呼ばれるようになった。人がつむぎ出す一言の、何と温かく力強いことか。気恥ずかしくて口に出せないけれど、ずっと感謝している。母ちゃん、ありがとう▼他人から与えられる評価に神経をすり減らす毎日よりも、自分と向き合い、個性を肯定して生きる方がどれほど意義深いだろう。コロナ禍でうつむきがちな人たちの心にも、救いの一言がありますように。

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