2022年3月9日付

LINEで送る
Pocket

善光寺の参道を歩いていたら、ひょうきんな顔をしたお地蔵さまに出会った。傍らではかわいらしいタヌキが数珠を手に祈っている。説明の看板を読むと、タヌキではなくムジナだった▼説明を引用すると、「むかし、下総国葛飾郡冬木村(今の茨城県猿島郡五霞町)に住んでいたむじなが人の姿になり」、善行寺参りの講中に潜り込んだ。ムジナは「殺生することなしに生きていけない自らの罪業を恥じ、後生を頼むため」、灯籠を寄進したかったのだという▼ところが参拝後の風呂でうっかり、ムジナであることがばれてしまい逃げ去った。これを聞いて哀れんだ住職が建てたのが、今も善光寺経蔵のそばに残る「むじな燈籠」だそうな。この逸話を基に彫刻家の薮内佐斗司さんが先ほどの「むじな地蔵」を作った▼動物にも分け隔てしない仏の慈悲についての説話のようだが、ムジナの住所だけ妙に具体的なのが気になる。殺生を気に病む人物がムジナに仮託して祈りをささげた物語なのでは│という印象を持った翌日、県が作成した「信州ジビエ」のリーフレットで諏訪大社が発行した狩猟の免罪符「鹿食免」について読んだ▼鹿食免には、生き物は人の身に入って同化することで成仏できるという意味の言葉が書かれている。人間の側の勝手な言い訳にも読めるが、これも「殺生することなしに生きていけない」人間の祈りの言葉なのだろうとも思う。

おすすめ情報

PAGE TOP