黒田さん「人生の記録」 教え子の詩集刊行

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黒田さんの願いを受けて詩集を出版した岩村さん(前列中央)と小泉さん(同左)

元美術教諭で画家の黒田良夫さん(89)=下諏訪町久保海道=が半世紀にわたって大切に保管してきた教え子たちの詩集「山脈―戦後を生きた少年少女の記録」が出版された。昭和30~51年に諏訪、上伊那地方で中学生だった308人の476点を収録。詩人の谷川俊太郎さん(90)が「こういう言葉を書くことが出来た子がいたということ、それを記録した人がいたということが私たちを力づける」と前書きを寄せている。

■写生の時間に詩を書かせる

掲載人数と作品数の内訳は、南箕輪中(昭和30~33年)が93人107点、富士見落合中(同33~34年)が16人18点、富士見南中(同34~36年)が57人66点、茅野市玉川中(同36~40年)が45人49点、同長峰中(同40~43年)が35人51点、諏訪養護学校(同43~51年)が62人185点。岡谷北部中を含む版画42点も掲載した。

黒田さんは、写生の時間に生徒に絵を描かせるだけでなく、詩を書かせる先生だった。美術教諭として「一層対象に迫らせたい」との意図があったが、「何より私がその詩を読みたかった」という。30年代を中心に多くの生徒は農作業を語り、黙々と働く父母への愛情をつづった。養護学校の生徒は生きる意味を問い、鋭い言葉で教師や社会の欺瞞を指摘し、全力で黒田さんにぶつかった。

長野日報社の取材に、黒田さんは「戦後の混乱の中で一生懸命生きていた時代があった。子どもも子どもなりに真剣に戦後を生きたことを知ってほしい。この詩集は俺の人生の記録でもある。できれば多くの人に読んでもらいたい」と語り、「みんなに会いたい」とつぶやいた。

■「最後の仕事」協力得て書籍化

「山脈」は南箕輪中時代に作ったガリ版刷りの詩集の名前で、師事する文芸評論家の亀井勝一郎(1907~66年)につけてもらった。谷川俊太郎さんが前書きを寄せたのは2000年6月。黒田さんは「最後の仕事」として書籍化を願い続け、岩村清司さん、小泉千波さんら友人3人の協力を得て出版にこぎつけた。

黒田さんは「私に言われて詩を書いてきた生徒たち、谷川先生に読んでもらえた感動を共有しよう、そのことに誇りを持とう」とあとがきにつづり、教え子たちと紡いできた授業を完結させた。

詩集は178ページ。教え子には無料で頒布する。問い合わせは、岩村さん(電話090・3147・6656)へ。

     ◇

黒田良夫(くろだ・よしお)  1932(昭和7)年下諏訪町生まれ。生家は農業。岡谷工業高校、武蔵野美術学校を卒業。伊那、諏訪各地の中学校、養護学校で教師生活を送る。89(平成元)年退職後、94年から3年間、奈良薬師寺へ境内の清掃の奉仕に夫人と行き、寺内宝積院に住む。下諏訪町の住居表示変更に伴う字名を守る運動に関わるなど、社会への発言が物議を醸すことたびたび。教師の肩書は使わないよう言われ、承知するが謝罪はしない反骨精神の持ち主。著書に「黒田良夫著作集」全3巻がある。多くの絵画、詩、書を残した。父は元下諏訪町長の黒田新一郎。心臓に持病があり、近年は交通事故にも遭い、入退院を繰り返している。89歳。

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