2022年3月31日付

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スマホを開くとメッセージの着信。「中学校を卒業いたしました!」と文字が踊っていた。いつも折り目正しく、大人びた態度の彼女が初めて子どもらしさをのぞかせた▼女手一つ朝から晩まで働く母を喜ばせたい一心で偏差値の高い高校を目指していた。いつも友と自分を比べてその差に焦る。「合格だけが生きる意味」とひたすら机に向かったが、受験を目前にして心の糸がぷつりと切れてしまった▼高校進学は諦めた。毎日、疲れ切って帰宅する母と姉の姿を見るにつけ「悲しませ、迷惑をかけている」と自責の念が込み上げる。「私がしっかりしなければ」と思うが、折れて立て直せない心は悲鳴を上げる。15歳の少女にはあまりにも重い人生の選択だった▼春の門出の季節が晴れやかなものとは限らない。希望の道を進めなかった人、次の一歩が見つけられない人、別れの悲しみから立ち直れない人もいる。それでも一つの区切りは新たな出会い、新たな道の出発点。先の見え方はその人の心のありようで変わりもする。もちろん、今の状況が人生の全てでもない▼前述の少女はイラストレーターになりたいという。画力を磨き、職を得るための上京資金をアルバイトで貯めるそうだ。苦しみの末につかんだしばしの自由な時間。「今は無理に振る舞うより、家族に迷惑かけてもいいのかな。その分、大人になったら親孝行できる人になりたい」。

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