古民家再生し地域の拠点に 「ワッカアグリ」

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囲炉裏のある居間。農業体験などのイベントで利用する

伊那市長谷で海外向けの無農薬の米作りを手掛ける農業生産法人「Wakka Agri」(ワッカアグリ)が、長谷中尾の古民家を再生し、地域の拠点として運営を始めた。法人の事務所が入るほか、農業体験や農家民泊を受け入れたり、シェアオフィスとして貸し出したりする構想だ。地元で採れた蛇紋岩を使ったかまども設置。長谷のおいしい米をかまどで炊いて味わうこともできる。人口減少や高齢化が進む山あいの集落で、地域の魅力を発信し、移住定住の促進や地域の振興につなげていきたい考えだ。

■無農薬の米作り手掛ける

同法人は現在10ヘクタールの水田を管理し、7ヘクタールで通常の玄米より胚芽が3倍ほど大きい品種「カミアカリ」などを生産。米の海外販売を手掛ける「Wakka Japan(ワッカジャパン)」を通じて香港や台湾、シンガポール、ハワイなどに輸出している。

2013年にワッカジャパンを立ち上げた出口友洋さん(43)は会社員として海外勤務を経験する中でおいしい日本産の米が手に入りにくいことに着目。脱サラし、全国の農家や農協と契約して玄米をアジアやハワイに輸出、現地精米にこだわった日本産米を販売する事業を始めた。

17年にはワッカアグリを設立。健康志向の強い海外の消費者をターゲットに、無農薬、無施肥の自然栽培の米の生産を始めた。「農薬は国ごと規制が異なり、貿易上のリスクになる。何も使わなけば議論の余地はなくなる。自然栽培は逆算の発想だった」と出口さん。「米が主食の日本と違い、味よりヘルシーさを重視する海外市場のニーズにもマッチした」という。

地元で採れた蛇紋岩で作ったかまどと出口友洋さん

■農業体験や民泊受け入れ

事業が進展する中で事務所としていた家屋が手狭になってきたことから、目を付けたのが空き家となっていた築120年の古民家。木造2階建てで、2階部分は養蚕に使われていた。集落の東端にあり、「東」という屋号で呼ばれていたという。地権者の厚意で譲り受け、昨年秋から改修工事に取り掛かった。

それまでのリフォームで細かく仕切られていた部屋を本来の間取りに戻し、隠れていた土間も復活。床や屋根は張り直し、壁のしっくいも塗り直した。梁や柱などの骨組みはそのままに、耐震化を図り、断熱材を入れたり、水回りを直したりして現代の生活にも適合するよう手を入れた。

居間にはいろりがあり、訪れた人を歓待したり、農業体験や集会などのイベントで使ったりする予定。四つある畳の間は農家民泊などでの利用を想定。2階の利用方法はまだ決まっていないが、シェアオフィスとして貸し出すことなどを検討するという。

■5年後10年後集落の維持を

出口さんは「長谷に入って6年目。年々人が減り、高齢化も進んでいる。今は共同作業で林道や農道、水路を維持しているが、5年後、10年後はどうなっているか分からない。農業を続けていくためにも集落を維持していく必要がある」と指摘。新たな拠点を通じて「この地域に興味を持ったり、ファンになってもらったりして関係人口を増やし、移住定住につなげていきたい」と話している。

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