2022年5月3日付

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戦中に幼少年期を過ごした劇作家の井上ひさしさんは、国民学校に通っていた当時、君たちも長くは生きられないだろう―と先生から言い聞かされた。戦争で多くの若い命が奪われた。「二十歳前後というのが、きみたちの寿命だ」と▼それが終戦の日、8月15日を境に一変する。「30、40まで生きていいのです」。頭の上の重しが取れたようで、しばらく呆としていたという。その気持ちがシャンとなったのは敗戦翌年、日本国憲法公布のときだったと、開放感にも似た気持ちを著書に記している▼二度と戦争で自分の言い分を通すことはしない―。条文からにじむ覚悟に体が震えたという井上さんは、このときの誇らしい気分を分けてあげたいと「子どもにつたえる日本国憲法」(講談社)を著した。前文と9条を小学生でも読めるよう井上流に翻訳している▼国際平和を希求する崇高な理念をうたった憲法について、これまで以上に思いを巡らせている人が多いのではないか。ロシアのウクライナ侵攻の惨禍が日々伝えられる中で「憲法記念日」を迎えた。憲法9条の改正や防衛力強化の議論が国内で熱を帯びてきている▼市民の犠牲を顧みないロシアの攻撃によって、ウクライナでは子どもや若い人たちの尊い命が奪われている。対岸の火事ではない。憲法施行から75年。「この国のかたち」の基となる憲法はどうあるべきか、胸に問う日になるといい。

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