2016年10月28日付

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クラシック音楽というと高尚で少し気後れしてしまうがこの音楽祭が30年も続いたのは地域の持つ力だと思う。高遠出身の音楽教育家、伊澤修二を顕彰する第30回音楽祭があす伊那市で開かれる。地域の音楽祭として続いたのは芸術鑑賞というだけでなく、伊那らしさ、高遠らしさがあるからだろう▼伊澤が初代校長を務めた東京藝大の若手演奏家たちが毎年演奏する。それにとどまらず、地元の人たちが合唱や演奏、音楽劇などで参加するのがいい。昨年は小学生が高遠の昔話や伊澤の生涯を題材に音楽劇を発表した。住民参加の音楽祭ならではの光景だ▼「音楽と土地」の関係を、バイオリニストの松田理奈さんが語っている。ベトナムのハノイで現地の国立交響楽団と初演奏した時のこと。会場の扉は開いたまま。車の騒音も筒抜けだった。楽団員は、「自分たちは戦争を経験した。あんなのはかわいいもの」と涼しい顔だった▼そんな環境の中でも聴衆は熱心に演奏に聞き入る。松田さんは「いろいろな背景で音楽の聴き方がここまで変わる」と、土地の持つ歴史と音楽の深い関係を実感したそうだ▼下諏訪町では今月開いた北欧音楽祭すわが18回目を迎えた。音楽はどこで聴いても同じだと思われがちだが、演奏される土地と切り離せないようだ。演奏家とその土地の歴史や文化、住民の力が合わさって、初めて音楽祭として成立するものなのだろう。

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