伊那タクシー(伊那市坂下)と白川タクシー(同市山寺)は4月から24時間営業を見直し、電話の受け付けを午前2時から4時間程度休止する。慢性的な運転手不足と高齢化、日中のタクシー需要の増加に加え、4月から労働時間規制が強化されるため、休止時間帯を設けて人員を確保する必要があると判断した。一方、居酒屋やスナックなど飲食店が集積する地域の実情を考慮し、2社とも金曜と土曜は電話の受け付けを午前4時まで延長する。飲食店関係者は「タクシー会社には存続してもらわないと困る」と語り、理解を示している。
2社の24時間営業は20年余り続いてきた。4月以降の電話受け付けは、日~木曜は伊那タクシーが午前6時~翌日午前2時、白川タクシーは午前6時30分~翌日午前2時となる。ただ金曜と土曜の夜は翌日午前4時まで延長し、深夜の人出に対応する考え。
伊那タクシーによると、運転手は現在40人(うち女性1人)で、平均年齢は61歳。定年やコロナ禍の収入減に伴う退職、採用難から4年間で10人減ったという。
夜間勤務は1日10人前後の運転手が交代で担っているが、高齢化で体力的な限界を口にする人も多い。昨年5月以降、新型コロナの5類移行でタクシー需要が回復。自治体の支援を背景に高齢者の買い物や通院といった昼間の利用も増えていて、運転手の確保は喫緊の課題だった。
さらに、労働時間規制で運転手の拘束時間が上限15時間(現行16時間)に厳格化される。同社は昨年8月ごろから検討を始め、運転手や運行管理者と話し合いを重ねた。未明の利用がほとんどない実態調査の結果も踏まえ、人手不足を補うために今年1月に休止時間帯の導入を決めた。
一方で、運転手が確保できれば24時間営業を再開したい考え。ただ、運転手の給料は走った分が反映される歩合制のため、労働時間の短縮と働きたい運転手の希望を「両立するのは難しい」という。
運転手歴17年の唐澤美春さん(47)は「自分の体を大切にすることが長く働くことにつながる。長い目で見ればお客さまに貢献できると思う」と語る。同社取締役の小松直樹営業部長(59)は「人手不足の中、限りあるタクシーをいかに有効に提供できるかを考えた結果です。ご不便をおかけしますが、社会情勢の変化をご理解いただければ」と話している。
伊那市と南箕輪村の飲食店約240店でつくる伊那飲食店組合の中村正一組合長(75)は「タクシー会社が存続しなければ私たちも困るので致し方がない。コロナ禍で飲み方が変わり、昔のように2時、3時まで飲む人は少なくなったが、今も2時前後の帰宅を支える必要はある。週末の営業を延長するなど、柔軟に対応してもらえたらありがたい」と述べた。
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