太平洋戦争末期に上伊那地方などに疎開した旧日本陸軍謀略機関・登戸研究所の中沢分室(駒ケ根市)について、同研究所が兵器を製造する重要施設に位置付けて本土決戦に備えていた可能性があることが分かった。上伊那地方の住民有志グループ「登戸研究所調査研究会」が16日、新たに見つかった同研究所の出した文書を公開し、文書からうかがい知る内容などを発表した。
新たに見つかったのは、1945(昭和20)年6月4日付の地元関係者への懇親会の案内状1通で、差出人は登戸研究所長の篠田鐐。中澤国民学校内に設けた同研究所中澤製造所に地域の有力者を招き、施設の一部を見学する機会も設けていた。案内状に「中澤製造所」と表記されていることについて、「兵器の研究開発だけではなく、製造が主な任務になっていた。いくつかの工場の中でも、特別な位置にあったことは明らか」と同研究会。
同研究会の聞き取り調査などによると、中澤製造所は1945年4月に本格稼働。一時は10歳代の生徒ら約500人が作業し、缶詰型の爆弾を製造していたとされる。この案内状には「着々所期の目的を達成しつゝある」と記されている。同研究会の小木曽伸一共同代表らは、所期目的について今後考察していきたいとした上で、「本土決戦の準備が主目的。松代大本営を守るための遊撃戦を想定し、大量の爆弾を製造したのではないか」との見解を示した。
案内状は、受取人の親族が遺品整理をしていた際に見つけ、4月に同研究会に提供した。研究会によると、同研究所に関する資料は焼却、隠滅されていて、ほとんど残っておらず、「研究所が発出した文書で、非常に貴重」。「大切そうに見えない資料でも実は貴重だったりする。ぜひ提供を」と呼び掛けている。
問い合わせは同研究会事務局(電話090・8365・5034)へ。
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