原村の八ケ岳美術館で22日、開催中の展示会「世紀を超えた鳥類標本の全容」の関連イベントの講演会が開かれた。信州大学理学部付属湖沼高地教育研究センター諏訪臨湖実験所(諏訪市)の笠原里恵助教が「剥製とその遺伝子解析が教えてくれること」と題し、遺伝子研究が進んで見出された剥製の新たな学術的価値について解説した。
笠原さんは、かつて学校などで見られた鳥や動物の剥製標本は教材としての利用頻度が減り、劣化して廃棄されている―と現状を話した。その一方で近年は解析技術が発展し、剥製の組織を使い過去の食性や遺伝的多様性などが推定できるようになったと説明。「組織を使って分析できることで剥製に新たな学術的価値が付加された」と強調した。
剥製の組織から抽出した遺伝子の研究により、病原菌への耐性や環境変化への適応を調べることができ、絶滅種の系統解明もできると解説。遺伝子研究が絶滅危惧種の保全に貢献している事例として、ライチョウを増やす取り組みを紹介した。
同館では、日本野鳥の会諏訪支部名誉支部長の林正敏さん=岡谷市=が所蔵し、国立科学博物館(茨城県つくば市)に寄贈する予定の鳥類標本など約3000点を展示。明治末期から大正期に収集されたライチョウをはじめとする貴重な鳥類の剥製などを紹介している。7月7日まで。
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