国枝史郎(1887~1943年)は大正末期から昭和初期にかけて大衆文学で活躍した伝奇作家だが、没後80年を経過した今では郷里の茅野市でも知る人は少ない。怪奇と幻想、怨念と復讐が交錯する作品は目を背けたいのに、見ずにはいられない神秘的な美しさにあふれている▼国枝は宮川村茅野(現茅野市宮川)に生まれ、八ケ岳を望む上川のほとりで幼少期を過ごした。早稲田大学で詩や演劇に熱中し、大阪朝日新聞の記者を経て松竹座の脚本家となる▼1920年にバセドウ病を患い、松竹座を退社。茅野の実家で療養した翌年、木曽福島町(現木曽町)に転居する。この頃大衆文学の執筆を始め、「蔦葛木曽棧」「八ケ嶽の魔神」「神州纐纈城」といった傑作を残し、江戸川乱歩ら怪奇小説ブームの礎となった。自由で奇抜な空想が現代のドラマやゲームに与えた影響は計り知れない▼文学研究家の山蔦恒さんは「国枝は故郷から疎外され、その文学は正当に遇されていない」とする。藤村や赤彦を畏敬する信州の文学風土に触れ、大衆文学に対する低い関心を嘆いた。下諏訪や茅野の古老に招かれ、新聞は国枝を再評価すべきだと諭されたこともあった▼諏訪を舞台に土俗的な作品を多く残し、大正ロマンを体現した国枝は、茅野市木落し公園近くの円通山宗湖寺に眠る。久保田恒栄住職に案内してもらった。ファンの墓参は今も絶えないという。
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