近所の農産物直売所に出掛けると、シナノレッドとシナノリップが並んでいた。12月まで続く県産リンゴのリレーで先頭走者を務める。リップは２０１８年登録の早生品種。高温期でも赤く色づく特性を持つ▼購入してかぶりつくと、シャキシャキ食感とほのかな酸味が楽しめた。厳しい残暑が続くが、店頭で県産リンゴを見掛けるようになると秋到来を感じる。色や香りも豊かになり、直売所やマルシェ会場でも気持ちが躍る▼大好きな秋ではあるが台風の季節でもある。19年10月の台風19号では上伊那で８９００万円の農業被害が出た。出来る限りの事前対策を講じた果樹園でもリンゴの木が根こそぎ倒れ、収穫間近の中生種や晩成種の実が大量に落ちたり傷付いたりした▼農家を救ったのは住民の皆さんだった。社協が募ったボランティアが枝を片付け、地面に落ちた実を収集運搬した。倒れた木の中に潜り込んで拾った子も。菓子店が農協を通じて出荷できない実を仕入れ、アップルパイにした。食べて応援したいと１時間で２００個が完売したのを覚えている▼消費者に至るまでの支援のリレー。「心が折れかかっていた。涙が出るほどうれしい」。園主は感謝の言葉を繰り返して、前を向いた。心も支える非常時のマンパワー。一人ひとりが身を守る策を講じて無事であることが大前提になる。台風が近づいている。私たちも備えを。この週末から。