「敬老の日を過ぎて載せたら旧聞だな」。100歳以上人口の発表が17日になると県庁担当の記者から聞き、落胆の言葉が思わず口をついた。「旧聞」とはみんなが知っている古い話のこと。同業他社としのぎを削る私たちの業界では、最適な時機を逃して後れを取った情報に用いることもある▼14~16日の三連休に開く各地の敬老会に届けたいと思った。区長さんが話のネタにして、目の前のお年寄りに語り掛ける。優しい口調で健康長寿を祝い、感謝し、ねぎらう光景を思い浮かべた▼地域ではコロナ禍や担い手不足から行事の見直しが進む。顔を合わせ、話をする機会が減り、敬老会をやめる地区も出てきた。老いと病を身近に感じ、限りある命に向き合う高齢者にとって、ともに生きた隣人の存在ほど心強いものはない。住みよい地域づくりのためにも、敬老会は情報を届ける絶好のタイミングなのだ▼高齢者の統計情報は敬老の日に合わせて9月17日に発表される。重要なのは前に出すか、後に出るかである。ここ数年、県の担当者と同じ問答を繰り返す。今年も「国の発表が17日だから」の一点張り。どこを見て仕事をしているのだろう。政治や行政から生活感は伝わってこない▼統計情報がなくても敬老会の進行に影響はない。それでも記者は市町村を訪ね歩き、高齢者の今を取材する。地域に有益な情報と信じ、きょうも「新聞」を追い求める。
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