田んぼが夕日を受けて黄金色に光る風景が例年以上にうれしく、安心を覚える。諏訪地方では稲にまだ青さも残るが、収穫を急ぐ農家もあってはぞに掛かった稲穂が枯れる頃合いに待ち遠しさも湧く▼今年の米不足騒ぎには、市民の不安が膨らんだ。県内の米どころでは春先から県外客の買い占めが見られたが、地元店で主の焦りが強まったのは盛夏ごろ。生産、販売の各方面に取材を申し込んだが「買い占めに拍車がかかるからやめて」と口をそろえて拒まれた▼それでも関係者の懸念通り、間もなくいずこの店も棚が空っぽになった。中には抽選制で売る業者も出てきて、主婦の間では「どこかの店にまだお米ある?」との会話が飛び交った。麺類やパンでしのげばいいと思っても世間の勢いに焦りを抑えられないのが人心▼米不足の原因は、昨季の不作や海外での日本食人気、加えて防災備蓄の需要などといわれているが、その程度で食卓から主食が消えるほど国内の生産力は脆弱なのかと足元をすくわれた思いがした。半世紀もの間減反を進め、一方で輸入する国策に目を向ける時か▼米価安定のために水田を泣く泣く畑に変えてきた農家の収入が上向いたとの声も聞かれない。今年は高温の影響か稲の倒伏も多く、刈り取りの苦労も目に浮かぶ。不足して知るのは作り手の大切さ。飯粒を一つも残さない日本人のしつけに感謝の心を思い出す秋だ。
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