選挙前後で耳にする「政治家なんて誰がなっても同じでしょ」という言葉にいつも違和感を持っていた。自分たちの思いを誰に託すのか、託さないのか。耳を傾ければ同じ党でも違いを感じるし、SNSやAIの発展で有権者の情報の受け取り方も多様になった▼ただ、そんな自らの考え方が少し揺らいでいる。最多9人の候補が論戦を交わした自民党総裁選で新総裁となった石破氏は、野党との国会論戦を経ずに早期解散すると語る他の候補に反論する形で与野党議論を重視する立場を鮮明にした。だが、総裁の椅子に座ったとたん、その主張はどこへやら▼石破総裁は首班指名に先立って9日の衆院解散の意向を表明したのはまさに異例。総選挙は「15日公示、27日投開票」となる。党重鎮の「政権の浮揚効果が見込めるうちに選挙した方が得策」という判断を受け入れたらしいが、えらく焦ってはいないか。総裁選で違いが見えた国会との向き合い方は結局「誰がなっても同じ」だった。一事が万事とは言わないが、防災省創設など総裁選の公約はどうなるのだろう▼きょう1日は臨時国会が召集され、石破首相が誕生する。国会論戦がゼロというわけではなさそうだが、十分とは言えないだろう▼それでも投票を棄権するのは得策ではない。「誰がなっても同じ」という政治で良いのか。わずかばかりの国会論戦に耳を傾け、来たる衆院選に生かしたい。
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